第2226号 展示会、見本市を有効に活用してほしい
2023.01.15
 令和5年。松の内も明け、世の中、本格的に動き始めた。ところで、松の内とは正月に飾る松飾り(門松)を立てておく期間のことで、松の内の終わりの時期は地域によって異なり、関東や東北、九州地方などは1月7日まで、関西地方は1月15日の小正月までとする場合が多い。そんな中、業界においては、個々の企業の商売が始まると同時に、1月21・22日、東京ビッグサイトで行われる「ハンドメイドインジャパンフェス冬2023」の開幕によって今年の手づくり関連イベントがスタートする。この後、2月の「手づくりフェアin九州」、「インターナショナルギフトショー」、3月の「東京キルトショー」へと続いていく。
 コロナ禍により、2019年から中止、延期が続いた手づくり関連イベント。昨年、その多くがウイズコロナの状況下で3年ぶりの開催となり、動員数などに大きな影響が及んだ。その意味でも、今年からが過去の水準を取り戻す再スタートの年となる。「〇〇展示会」は、東京ビッグサイトやインテックス大阪など、大きな会場にさまざまな企業がブースを構えて、そこに新商品やサービスを置いて、商品説明をしたり、カタログを渡したり、商談をしたりするイベントのこと。だが、ときどき「見本市」という言葉も聞く。この展示会と見本市に関して、その違い、さらに消費者ショーの意義について考えてみたい。
 一般的に、イベントは大きく見本市と展示会に大別できる。見せるのが展示会、売るのが見本市とする考え方もあるが、言葉の意味から違いを考えてみると、展示会の意味は「展=広げる、並べること、「示=わかるように見せること」、「会=出会うこと集まること」ということで、人が集まる場所で、多くのものをわかりやすく並べて見せるという意味になる。一方の見本市の意味は「見本」=商品全体の質を見るために1つ取り出してみること、「市」=大勢が集まって売買することとなる。見本を見て品質を判断し、大量ロットの注文をする場と解釈できる。展示会は販促や認知向上が主眼で、見本市は商談が目的ということになる。ちなみに、展示会(見本市)大国のドイツ語では見本市をメッセ(Messe)、展示会をオウスステロング(Ausstellung)というそうで、幕張メッセなど、日本の展示会場でメッセがつく会場も多い。
 今年も、さまざまな業界、地域で行われる見本市やトレードショー、さらに消費者ショーは、商売をする企業にとって宝の山、ぜひ参加して有効に使っていただきたい。
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第2225号「どうなる 2023年の日本」
2023.01.01
 2022年もwithコロナの影響下での1年となった。周りの近しい人のなかでも何人かが感染し、隔離生活をしいられた。現在も、町中ではすべての人達がマスクを着けている。この夏、イギリスから帰国した娘によると、マスク着用の義務解除とともに、かの国ではほとんど全員がマスクを外し、再びまん延しているという。そういえば、大阪(天神橋筋商店街)でも、最近急速に増えてきたインバウンドの人達はマスクはしていない。日本人の真面目で几帳面さがこのマスク着用にも、よく表れている。
 withコロナは置いとくとして、今年、日本はどうなるのか、政治学者や経済学者はさまざまな観点から予測を発表している。昔から、当たるも八卦、当たらぬも八卦という言葉通り、予測が外れても怒る人はいない、いい商売だと思う。あらためて「2022年から2023年にかけての出来事」を見てみると、国内でも世界でも、想像できなかったような出来事が多く発生している。
 ロシア/ウクライナ戦争、130円を超える円安と、世界は1年前には誰も想像していなかった環境になっており、一方で、大方の予想通りパンデミックは落ち着きはじめ、日本でもようやく、インバウント再開やマスク圧力の緩和が始まっている。さらには、値上げラッシュや給付金の終了、インボイス制度が始まるなど、個人や事業者にとっては厳しい環境が続いている。とはいえ、この数年の波は、従来型の経済全体を落ち込ませる危機ではなく、2021年は、巣ごもり消費やリモート対応に成功した企業に、そして、2022年は輸出を中心に円安が追い風となる大企業に史上空前の利益をもたらすことになった。長く上がらなかった日本企業の賃金も、ようやく各業種で上がり始めており、経団連も今年の春闘で、業績がコロナ前の水準を回復した企業の賃上げ率が3.02%だったと発表している。一方で、輸入が多くなる中小企業や個人事業者は、原材料費や人件費上昇、人材不足、コストダウン要請への対応、物価高により堅くなる消費者の財布のひもに苦戦を強いられている。
 そんな状況下、業界によってキーワードは異なるが、ビジネスに大きな影響があったものとして、マスク緩和、リモートワーク解除、GOTOトラベル、円安、ステルス値上げ、NFT仮想通貨、水素燃料などか挙げられる。いずれも、従来にはなかった、もしくは存在しても、さして影響力のあるものではなかった。2023年はいかなるトレンドのもとに、どんな新しい業態、商品が登場するのか、楽しみである。
time.png 2023.01.01 11:21 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column
第2224号 「当たり前」のことができる日本人を称賛
2022.12.15
 令和4年もあと3週間、世界も日本も比較的平穏な1年だった。そんな中でも年明けから、さまざまな出来事がテレビ、新聞を賑わせた。2022年重大ニュースとして挙げられるのが、ロシアのウクライナ侵攻や冬季オリンピック・パラリンピック、成人年齢の引き下げ、参議院議員選挙、異常気象等、さまざまなニュースが世界や日本を駆け巡った。小欄にとって一番ショックだったのが、奈良市の近鉄・大和西大寺駅付近で、元内閣総理大臣の安倍晋三氏が凶弾に倒れ、命を失ったことだ。未成熟な国家ならまだしも、安定した平和な法治国家での凶行であり、その報に接した時、俄かには信じることができなかった。応援演説中に、背後から銃撃を受けたもので、狙撃した人物は殺人未遂罪で奈良県警察に現行犯逮捕された。安倍氏は心肺停止の状態で奈良県立医科大学附属病院に搬送されたが、病院で死亡が確認された。背後に政治の影も見当たらず、いまだ事件の真相はわかっていない。
 さて、12月12日に、令和4年の一年の世相を表す【今年の漢字】に「戦」が選ばれた。京都市東山区の清水寺において日本漢字能力検定協会が発表した。「今年の漢字」は1995年に始まり、今年で28回目。師走の恒例イベントとなっている。ちなみに過去7年では◇2021年「金」◇2020年「密」◇2019年「令」◇2018年「災」◇2017年「北」◇2016年「金」▽2015年「安」となっている。
 ところで、今、日本中の人々を熱狂させているカタールでのワールドカップ・サッカー大会。下馬評では決勝トーナメント進出すら危ういと見られていた日本チームだったが、12月1日に行なわれたスペインとのグループE最終戦で2対1の逆転勝利を収めた。夕方のニュース番組でスタジアムが映し出され、ピッチ上での激闘に加え、世界中に配信されたある光景が話題を呼んでいる。スペインと日本の試合で、終了を告げる笛とともに会場の日本サポーターは歓喜に満ち溢れていたが、すぐに切り替えてスタンドに落ちているゴミを次々と拾い上げゴミ袋に入れていったのだ。現地の女性レポーターがその行為について訊ねると、若い日本人男性が「当たり前」のことと答えた。
 「当たり前」という言葉を紐解くと、「誰がどう考えてもそうあるべきだと思うこと、当然なこと」という意味で使われる。「今回のワールドカップで日本が一番魅力的だ。フィールドの内外問わず、日本のファンは興味深く尊敬に値する。試合後はスタジアムを綺麗に掃除する」と発信され、やって「当たり前」のことを「当たり前」にできる日本人の素晴らしさが世界に発信されている。
time.png 2022.12.15 11:20 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column
第2223号 12月8日は「針供養」の日
2022.12.01
 世の中には、人々によって受け継がれてきた伝統行事がある。その一つに「針供養」があり、京都など西日本は12月8日に、東日本は2月8日に行われることが多い。小欄も10年ほど前まで、毎年、京都の北西、岩倉地区にある針神社に取材をかねて出かけていた。当日は、針に関連する業者や和洋裁学校、ファッション専門学校、地元の人達が集まり、神官の祝詞のあと、使い古した針を豆腐やこんにゃくに針を刺して供養する。この2月8日と12月8日を「事八日」ともいい、針に限らず、日頃お世話になっている道具を片付け、1日仕事を休んで感謝を捧げる。日本では古代よりさまざまな物に魂が宿ると考えられていたので、針以外にも、人形や仏壇、鏡や眼鏡といったものまで供養の対象になっている。 
 針供養の起源は定かではないが、中国の土地の神様をまつる日に針線(針仕事)を止むという習わしに起因するという説がある。平安時代には貴族の間で行われるようになり、江戸時代に針の労をねぎらい、裁縫上達を願う祀り事として広がったと言われる。針仕事は女性にとって重要な仕事だったため、折れた針や古くなった針に感謝の気持ちを込めて柔らかい豆腐やこんにゃく、もちに刺し、地方によっては、川に流したり、土に埋めたりして供養し、裁縫の上達を願った。
 わが国における金属製の針は、大陸からの渡来人の裁縫技術者によって日本に渡来した。『古事記』の崇神天皇の条に「衣の襴に針を刺し通した」と記述がある。平安時代には「市」で針が売られており、庶民はその針で衣服を縫ったとされる。持ち運びしやすく安価に販売できることから、日本の中世において「針売り」は手軽にできる職業とされ、太閤秀吉が若い頃、武士になる前、尾張地方で針売りをしていたという話も残っている。
 昔は、着るものはすべて女性の手によって縫われており、中でも仕立屋に雇われて衣服などを縫う女性をお針子という。日本では,近世に裁縫を〈お針〉とか〈針仕事〉と呼ぶようになり,江戸時代には大名などの衣服を仕立てる呉服所で,針妙と呼ばれる裁縫をする女性が働いていた。裁縫技術は,江戸では家庭で身につけるのが一般的であったが,上方では縫物師のところや寺子屋でも習得した。明治になると,1872年の学制制定以降,小学校や女学校,裁縫教育を中心とする女子教育機関で習ったり,仕立屋で身につけたりした。今もお針子という職業があり、一方で家庭での裁縫は、ホームソーイングと呼び方こそ変わったが、趣味のひとつとして連綿と受け継がれている。
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第2222号 値上げの秋がスタート
2022.11.15
 食べるものが美味しいシーズンがやってきた。食欲の秋到来である。世間で言うところの「グルメ」ではないが、昔から言われる食いしん坊なのである。したがって、安くて旨いというものがあれば、少々遠いところであっても出かけて行く。昼飯も例外ではなく、昼休みの短い時間でも、地下鉄や電車で親子丼などを食べに出かける。食い倒れの町、大阪には、その安くて旨いところがワンサカとある。年に何回か行く東京にも、金さえ出せば旨いものはいくらでもあるが、旨いものは高いという経済原理が働き、そこそこのレベルで手を打っているのが実情である。ついでに言えば、名古屋は、なかなかのグルメの町である。手羽先、味噌カツ、ひつまぶし、名古屋コーチン、きしめんなど、他府県の人が一度は食べてみたいという食べ物が目白押しだ。これをB級グルメと称して一段下に見る向きもあるが、食べ物にA級もB級もないと常々考えている。
 今年の秋はまた、値上げの秋でもある。日本中に「安さ」が溢れ、デフレ状況が長く続いた平成の30数年。その代わり給料も上がらず、経済面からみれば、平穏な時代でもあった。世界的に見ても物価が高いといわれた日本は、賃金を含めて先進国の一員というにはほど遠く、見劣りする位置にいた。この状況で起ったのが、高い労働力や技術力の海外への流出で、それによって国内に停滞が生まれ、何事もなく静かに過ぎ去ったかのように思えた平成の30年間に、日本は様変わりしてしまったのだ。
 そんな長い物価の停滞期を経て、今年の秋は原材料価格や物流費の高騰を受け、食品・サービスなど幅広い分野で値上げの動きが広がっている。原材料価格や物流費の高騰、円安などに直面する企業の値上げが止まらない状況が出始めているのだ。その動きは食品・生活用品メーカーや外食チェーン、コンビニエンスストアなどに広がっている。昨秋に比べると食品の値上げ率は大きく、例年と比較しても引き続き「値上げラッシュ」といえる状況は続いている。
 11月に入って、値上げはまず食関連から始まった。帝国データバンクの調査によれば、 食品メーカー105社で833品目、牛乳など日配品の値上げによって「インフレ」ともいえる状況に入っている。価格改定率は平均で14%に達し、原材料高や急激に進んだ円安を反映した夏から秋以降の大幅な価格引き上げが、全体の値上げ率上昇を招く要因となっている。今秋の値上げが、静かだったわが国の経済にどう影響していくのか。注視していく必要がある。
time.png 2022.11.15 12:41 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column

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