第2293号 本当の「女性の時代」がやってきた
2025.10.15
 初めて女性の自民党総裁が誕生した。高市早苗氏は10月に開かれる臨時国会で日本史上初の女性首相に就く見込みだ。政治と無縁のサラリーマン家庭で育ち、サッチャー元英首相に憧れた保守の論客が「ガラスの天井」を破った。自民党の新総裁に選ばれた高市早苗氏は1961年奈良県に生まれ、現在64歳。若い頃はバイクを乗り回し、神戸大学時代は軽音楽部に入り、ヘビーメタルバンドでドラムを担当していた。大学を卒業すると、松下政経塾に入塾。そして、アメリカ議会のスタッフを経て日本に帰国するとテレビのキャスターとしても活躍し、フジテレビの朝のワイドショーの番組キャスターを務めていた。
 政界進出は1993年の衆議院選挙で、無所属で出馬し、初当選した。世界では、2005年にドイツ初の女性首相となったアンゲラ・メルケル首相,韓国初の女性首相ハン・ミョンスク氏など,近年,女性の国家リーダーが次々に誕生している。現職の国家リーダーとしては,フィンランドのタルヤ・ハロネン大統領,フィリピンのアロヨ大統領,アイルランドのメアリー・マッカリース大統領,2006年にチリで初の女性大統領に就任したミチェル・バチェレ・ヘリア大統領が活躍している。この他にも,過去を振り返れば,英国のマーガレット・サッチャー首相やフィリピンのコラソン・アキノ大統領など,社会に大きな影響を与えた数多くの女性首相・大統領たちが歴史に名を残している。アイルランドやニュージーランド,フィリピンなど,すでに複数の女性首相・大統領を輩出している国もあり,世界的に見ると,政治分野での頂点である国家の首相・大統領にも女性の参画が進んでいる。
 今回の高市氏の宰相就任を待つまでもなく、わが国における近年の女性の活躍は目覚ましいものがある。政治の世界だけでなく、2024年には企業における女性の管理職比率は30%にまで増えた。ただし、男性社会が続いてきたアジア諸国(タイ、マレーシア、ベトナム、中国、インドネシア)に比べてもその比率が低いのが現状。世界ではこのような女性の企業内でのステップアップのみならず、起業を目指す女性も増えている。タイやシンガポールでは、女性起業家の方が男性起業家より多いという。
 女性の方が物事に対して柔軟に対応する力があり、チーム力、コミュニケーション力も高いことから、女性起業家は今後ますます増えてくるものと見られている。本格的な「女性の時代」到来がそこまでやってきている。
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第2292号 10年間で3割以上減っている「街の本屋さん」
2025.10.01
 「暑さ、寒さも彼岸まで」とは良く言ったもので、朝夕めっきり涼しくなり、凌ぎやすくなった。そんな中、テレビを一切見なくなって半年以上になる。世の中のことは新聞とラジオで間に合わせている。そして四季のなかで、一番好きな読書の秋の到来である。自然に本屋に足が向く。
 その書店が今、大ピンチに陥っているという。インターネット、スマホ、SNSなど、デジタルの荒波が押し寄せ、「街の本屋さん」が次から次へと閉店している。日本出版インフラセンターによると、書店の2023年度の総店舗数は全国1万918店で、10年前の1万5602店から3割以上減った。23年度の閉店数は614店で新規開店は92店と、減少に歯止めはかかっていない。「書店のない市区町村」が24年8月末時点で全国の27.9%に及んでいる。そして、この書店激減の背景には、売り上げ不振がある。
 出版科学研究所によると、日本で紙の出版物(本と雑誌)の売り上げは1996年に2兆6564億円とピークに達し、そこから下降の一途をたどっている。2023年には1兆612億円まで落ち込んだ。とりわけ目立つのが、雑誌の落ち込みで、2022年の売り上げ(週刊誌、月刊誌、コミックス、ムック)は4418億円と、ピークだった1997年の3割にも満たない。
 関連して「読書離れ」を物語る数字もある。文化庁の2023年度「国語に関する世論調査」では、1カ月に本を1冊も「読まない」と答えた人が62.6%と、5年前の前回調査を15.3ポイント上回り、初めて6割を超えた。読書量が以前より「減った」と答えた人も69.1%。減った理由を尋ねたところ「情報機器(スマホやタブレット端末など)で時間が取られる」が43.6%と、最も多かった。
 このように、紙の出版物の市場が縮小し続けてきた原因は、社会全体のデジタル化に尽きる。情報収集の手段が多様化し、余暇の時間をインターネットやSNSが奪っているのだ。出版物の市場のピークだった1996年は、ネットの普及が一気に進んだウィンドウズ95の発売翌年に当たり、そこから下降の一途をたどる。人間が健全に成長していくうえで、街で本が手軽に買える環境は貴重で、書店が減れば日本人の知的レベルが低下しかねない。出版文化の多様性を守ることが大切だといえる。本屋が「文化なのだから経営を助けて」といった声を上げるのは甘えでしかない。小売業の一形態である以上、苦しい局面では自力で活路を探っていくしかない。何とかこの事態を乗り切ってほしいと、切に願う。
time.png 2025.10.01 11:12 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column
第2291号 「値上げの秋」がやって来た
2025.09.15
 今年の夏は暑かったと言いたいところだが、9月に入っても、まだまだ暑い日々が続いている。この影響により、海産物や農作物に深刻な影響が出ているという。こうした中、9月は1400品目を超える食品の値上げが控えている。
 何故、日本の都市部の夏はこんなにも暑くなっているのか。気象庁によると、今年の暑さの大きな要因として考えられるのが「偏西風」の影響であり、この偏西風は冷たい空気と暖かい空気の境い目に流れるが、今年は平年よりも北寄りになった。このことにより、日本全体が偏西風の南の暖かい空気に覆われる形となって気温が上がっていったという。その高気圧が偏西風を北に押し上げて、 季節の進行がとても遅いと見込まれている。少なくとも10月いっぱい、11月の初めぐらいまで厳しい残暑が長引くと見込まれている。10〜20年前の東京都心の夏は、最高気温の平均が29℃くらいだった。今年は現時点で、最高気温の平均が32.2℃なので、日本の夏が急激に暑くなっていることがわかる。
 そんな季節の移ろいの中、値上げの秋がやって来た。ことしはモノの値段が去年を上回るペースで増え続け、9月時点ですでに2022年の総数を超え、累計で約3万2000品目が見込まれている。今年は、夏の記録的な猛暑など天候の影響も値上げの要因の一つと見られる。漁業者からは「台風や秋雨前線の影響で操業できない日が多い」、また農家からは「天候不順により穀作物の生産が減少している」といった声が相次でいる。
 一方で、最近の値上げの大きな要因として、人件費の上昇を価格に転嫁する動きがあると指摘されている。2025年通年の値上げは、11月までの公表分で累計1万8697品目にのぼり、前年通年の実績(1万2520品目)を49.3%上回っている。1回当たり平均値上げ率は15%と、前年(17%)をやや下回る水準が続いている。食品分野別では「調味料」(6108品目)が最も多く、前年(1715品目)から+256.2%と大幅に増加した。値上げ要因では、原材料の価格高騰に加え、光熱費の上昇による生産コスト増、人手不足による労務費の上昇、物流費の上昇などが複合的に重なった。原材料高による値上げが全体の97.2%を占めた。人手不足に伴う昇給・賃上げによるコスト増を背景とした「人件費」の上昇が続き、また、特に6月以降の値上げを中心に電気・ガスなど「エネルギーコスト(光熱費)」由来の値上げも目立ち、全体の66.4%を占めた。この流れは2026年も続くと見られており、対応が迫られている。
time.png 2025.09.15 10:35 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column
第2290号 「盆踊り」とともに夏が去って行く
2025.09.01
 毎年8月は、甲子園で行われる高校野球観戦(実際に球場に足を運ぶ)と、京都の五山送り火を見に行くことが個人的な恒例行事になっている。高校生の頃から余程の事情がない限り続けている。五山送り火は、毎年8月16日に東山連峰にある大文字山(如意ヶ嶽)で午後8時ちょうどに点火され、「松ケ崎妙法」、「船形万灯籠」「左大文字」、「鳥居形松明」の五山で5分おきに炎が上がり、お精霊(しょらい)さんと呼ばれる死者の霊をあの世へ送り届ける伝統行事として、長年にわたって京都市民に親しまれてきた。
 そして今年も、大文字山から西へ1㎞ほど離れた船岡山の天辺(頂上でも120mほど)から幻想的な光景を目にする。ここは観光客が押し寄せることもなく、小高い丘の上から静かに炎の競演を目に焼きつけることができる。このような伝統行事は、日本に古くから伝わり、季節の移り変わりを感じる年中行事として各地で連綿と続けられてきた。お正月や節分、そしてお盆など、それぞれその地域ならではの特色を持つ行事が行われてきた。また、人生の節目を祝う儀礼も伝統行事に含まれ、七五三やお宮参りなどがその代表的なものとなっている。
 こうした年中行事に関しては、若い頃ほとんど興味も関心も持たなかった。それが、学生から社会人、そして結婚して子どもができ、一人立ちするようになると、こうした行事と無縁ではおれなくなり、結果として社会との繋がりが強くなっていく。日本の移り行く四季の中、さまざまな意味を持つ大切な年中行事がある。これら伝統行事・年中行事には、全国的に親しまれるものから、地域の特色が強いものまで多くあり、現代社会に生きる私達にとっても、伝統に触れる貴重な機会となっている。
 とりわけ、今が最盛期の夏祭りは、日本の夏の風物詩のひとつであり、多くの地域で開催され、神社や寺院の境内などで、さまざまな催し物や屋台が出て、神輿を担いでの練り歩きや、太鼓、お囃子の演奏などもあり、大人から子どもまで楽しむことができる。これも夏祭りの魅力だ。また、夏祭りの最大のイベントでもある花火大会も多くの場所で開催される。夏祭りには、さまざまな屋台も出店される。夏祭りの雰囲気を味わうために、浴衣や甚平を着たり、縁日の輪投げや金魚すくいなどを楽しんだりする人も多い。8月も終わる頃になると、各地で盆踊りも盛んで、暑かった夏を振り返り、行く夏を惜しむ。今年もそんな夏が足早に去っていく。そして秋がやってくる。
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第2289号 「休暇」をどう過ごせばいいのか
2025.08.15
 ほぼ毎年、8月16日のお盆の日には、五山の送り火を見るため京都に行く。これと夏の甲子園での高校野球観戦は自分にとって欠かせない恒例行事になっている。そして、今年も平均6日間(8月11〜16日/11日は山の日で祝日)の夏期休暇がスタートした。昔はお盆休み、今は夏期休暇と呼ばれ、東京や大阪の大都市圏では、帰省や行楽の高速道路の大渋滞の模様が報道される。日本中、最も暑い時期での民族大移動が今年も始まった。
 さて、夏の休暇の元となったのは、「薮入り」という風習にあり、お店(おたな)の奉公人が正月およびお盆の8月16日前後に暇を許されて、都会から地方の田舎に帰ることをから始まった。農村では奉公人だけでなく、他家へ嫁いだ女性が里帰りする日でもあり、こうした風習は近世に一般化した。そして、令和の今もなお、長期休暇に形を変えて続いている。
 日本生産性本部の余暇創研は、7月15日に「レジャー白書2025」を公表した。余暇活動の参加率は「国内観光旅行」が、前年から10ポイント上昇して42.8%となり、2019年以来の1位となった。また、「ドライブ」や「外食」など、外出をともなう種目に上昇傾向がみられる。一方で潜在需要は「海外旅行」が1位で、前年1位の「国内観光旅行(避暑、避寒、温泉など)」の需要は、参加率の上昇にともなって減少し、2位となった。「海外旅行」は潜在需要の減少幅が「国内観光旅行」と比べて小さいため1位になっている。
 かつて働き過ぎを先進国から指摘され、馬鹿正直に休みを増やし続けてきた日本。祝祭日の数では世界トップの国になってしまった。それにともない、時間を楽しく使うレジャー大国ともいわれる国となり、今年の夏も楽しさに充ちた情景が繰り広げられているのだ。
 今年、余暇創研が仕事(勉強や家事を含む)と余暇のどちらを重視するかを尋ねたところ、余暇重視派(「仕事よりも余暇の中に生きがいを求める」「仕事は要領よくかたづけて、できるだけ余暇を楽しむ」の合計)が67.8%と過去最高を更新した。とくに「仕事よりも余暇の中に生きがいを求める」割合が2021年以降増加しており、37.8%とこちらも過去最高を更新した。余暇活動の参加率は「国内観光旅行(避暑、避寒、温泉など)」が48.3%で3年連続の1位。「外食(日常的なものは除く)」「読書」「音楽鑑賞」が続く。
 しかし、約1カ月も有給休暇がもらえる欧米の先進国に比べれば、まだまだ働き過ぎの観は否めない。夏休み、どう過ごすか、悩みは尽きない。
time.png 2025.08.15 10:36 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column

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