第2227号 どこまで続く「値上げ」の流れ
2023.07.01
 「また値上げ 節約生活 もう音上げ」 第一生命保険は、今年も「サラっと一句!わたしの川柳コンクール(サラ川)」のベスト10を発表した。今回は物価高騰による食料品や日用品の相次ぐ値上げで、家計の苦しさを訴えた冒頭の句が幅広い支持を集めて1位となった。世の中で起きている値上げの動き。6月に入っても続いている。まずは食料品と飲み物。帝国データバンクがまとめた調査では、6月におよそ3600品目が値上がりしたという。去年の秋や今年の春と比べると、若干減ってはいるが、コストを販売価格に転嫁する動きは、まだまだ続いているのが現状だ。
 なかでも、家計支出でも大きな割合を占める電気料金。大手電力7社で6月の使用分から家庭向けの規制料金が値上げされた(関西電力・中部電力は料金据置き)さらに、サービスの分野でも、映画の鑑賞料金や引越し・家事代行サービスなどで、一部値上げに踏み切る動きが出ている。また、 政府が輸入した小麦を製粉会社などに売り渡す価格が4月に上がったことを受け、それを使った家庭向けの小麦粉や食パンなどが7月に値上がりするほか、 生乳の取引価格が引き上げられることを受け、牛乳やチーズの値上げに踏み切る企業も出てきている。
このように、さまざまな商品・サービスの値上がりが続く中、生活者は買い控えや節約などの工夫もしているが、実際の財布からのお金の出方には変化が生じているという。「意識や工夫はしつつも致し方ない」という部分が大きく、工夫をしようにもこれまでに値上がりした品目数の多さを考えると、「やりくり」の域を超えており、品目によっては再値上げ、再々値上げも続いている。
 今回の値上げの背景にあるのは、ロシアのウクライナ侵攻による、国際的な原材料価格の高騰にあるといわれる。昨年4月に消費者物価は、日銀の物価目標の2%を超えた。そして、円安も加わって、今年の1月には去年の同じ月と比べてプラス4.2%と、41年ぶりの上昇を見ている。その内訳は、電気代やガソリンなどのエネルギーの価格は、1年前と比べて下がった。一方、食料品が9%の上昇と高い水準となった。食用油などの値上がりが続いているほか、豆腐やお菓子、卵なども大幅に上がっている。食料品以外でも、エアコンや洗剤、さらに、ここへきて、サービスの分野でも値上がりが目立ってきている。
 庶民の暮らしを圧迫しつつある今回の値上げの流れ。知恵と工夫で乗り切っていく以外に道は残されていないように思われる。
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第2236号「サラリーマン川柳」から時代を読み取る
2023.06.15
 世の中の動きというものは、学者や評論家が難解な言葉を使って論じたものより、楽しく平易な「川柳」などからわかることが多い。とくに、サラリーマン川柳はわずか17文字でその時代が求める価値観に対する人達の悲哀や奮 闘ぶりを表現した歴史的遺産ともいえる。2023年は何が切り取られたのか。エネルギー高、原料価格高騰によるスタグフレーション化で戦う姿か、または小遣い を減らされる父親の悲しい背中なのか。不安定な世界情勢下でも家族の ために最前線で戦い、家庭では縁の下の力持ちとしてのお父さんのかっこいい姿を表現した 作品が選ばれた。 
 このほど、第一生命保険は「サラっと一句!わたしの川柳コンクール」のベスト10を発表した。今回も同コンクールには約8万句以上が集まり、全国約6万人の投票でベスト10が決定した。1位は得票数2754票を獲得した「また値上げ 節約生活 もう音上げ」だった。 この句は、食品や日用品など身の回りのモノの値段が上がる中、長引く節約生活の憂いをストレートかつユーモラスに詠んだ作品。「まさに私生活そのもの」「本当にキツイ」など、値上げに関する共感の声が多数寄せられた。
2位以下は、「ヤクルト1000 探し疲れてよく寝れる」(2196票)、「店員が 手取り足取り セルフレジ」(1836票)、「下腹に 脂肪が集合 密ですよ」(1732票)などが選出された。定番の健康を省みる作品など、日常でのちょっとした出来事をユニークに表現した川柳が支持を集めた。
 また、健康を省みる作品に加え、新型コロナウイルスに感染してしまった時の家族の暮らしを詠んだ作品やセルフレジでの体験談を詠んだ作品など、日常での出来事をユニークに表現した川柳へも共感の声が多数寄せられ、ベスト10にランクインした。
 インターネット経由の投票数を基に年代別に分析したところ、各世代の1位はいずれも「また値上げ 節約生活 もう音上げ」だった。20〜50代では「サイフより スマホ忘れが 致命傷」がいずれもベスト3に入り、スマホが財布以上に欠かせない存在であることがうかがえた。一方、60 代以上では、「店員が手とり足とり セルフレジ」がベスト3にランクイン。セルフレジの操作に戸惑う様子に共感の声が寄せられた。急激な物価上昇の中で節約にいそしむ姿や、物価高をネタとした川柳が数多く入選。たび重なる日用品の値上げに人々は右往左往。そんな苦労をも笑いに変える句が多くの人の共感を呼んだ。庶民は、依然として続く閉塞感の中、川柳で笑い飛ばすしかないようだ。
time.png 2023.06.15 10:08 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column
第2235号 怒るエネルギーを忘れてしまった日本人
2023.06.01
 昨日(5月28日)、難波の地下街にある中華チェーン店で五目焼そばと餃子一人前を食べた。ここでは何十年来、これしか食べないので、丁度のお金(1180円)を握ってレジに向かった。ところが、店員さんに告げられたのは1340円だった。昨今の値上げブームが、この大衆中華料理店にも押し寄せていたのだ。街中を見渡して、値上げしていないのは百均の店ぐらいで、あらゆる物が騰がっている。
 とりわけ、この4月から、普段食べている食材や日常生活に欠かせない日用品まで、さまざまな物の値段が上がっている。この原因として挙げられるのは、エネルギーや原材料などの価格高騰。製品を作るにも運ぶにも、資源は欠かせない存在。以前にも増してエネルギーコストが掛かるため、その分が物価に反映されされている。さらに、円安の進行により、多くの食品・製品を輸入に頼っている日本では、円安が物価に大きく影響し、輸入コストが高くなる分、価格に反映されている現状がある。この物価上昇に比べて賃金はほとんど上がらず、本来であれば、これを異常な事態だと考えるべきだが、政府はなんだかんだと口にはするものの、結局はほとんど何もせず、国民の怒りの鉾先を躱している。
 かつて日本人は元気よく怒っていた。働く人も、学生も、不満をぶつけて数万人規模でデモに参加し、国会を取り囲み、街にあふれ、警察と衝突した。ベトナム戦争が長引けば、アメリカに対しても怒った。今では、他人のことを怒鳴りながら本気になって怒る人も少なくなった。すっかり日本人は怒らなくなった。むしろ怒る人に冷ややかな視線を浴びせる。怒る原因に共感したとしても、怒るという行為自体を嫌悪する。そこで、街中から喧嘩をしている光景も姿を消した。若い人達のあり余るエネルギーは、一体どこへ行ってしまったのか。衣食足りて礼節を知る、静かで平和な国になった。
 「60年代から70年代にかけての日本は元気があった。若者がすごいバイタリティーを持っていたことも含めて、日本は元気があった。今も、政府にいろんな問題が起きてはいるが、学生を中心とした若い人達はうんともすんとも言わない。50年前だったら学生は大デモンストレーションを起こしている。怒るべきことがいっぱいあるのに、怒らなくなってしまったのだ。
 あらゆる物の価格高騰し、暮らしがどんどん圧迫される中でも、今の日本人は怒らない。もっと物言う国民であってほしい。
time.png 2023.06.01 10:25 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column

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