第2231号「WBC」感動をありがとう
2023.04.01
 齡(よわい)を重ねてくると、物事に感動する心は薄れてくる。いろんなことを経験して、少々のことには驚かなくなっているからだ。そんな小欄も、今回のWBCにおける侍ジャパン(日本代表チーム)の活躍には、心を揺さぶられた。スポーツでこれほど感動したのは、1985年の阪神タイガースが日本一になった時以来のことだ。今年のWBCの試合は、準々決勝の中国戦からすべてリアルタイムでテレビ観戦した。前回から6年という長いブランクを経て、日本の野球ファンが待ち望んだ大会。WBCといえば「2006年、2009年の連続世界一」の記憶が鮮明に残っており、世界一に手が届く数少ないスポーツでもある。アメリカ・フロリダ州マイアミで日本とアメリカの決勝が行われ、日本が3対2で勝って3大会ぶり3回目の優勝を果たした。とりわけ、今回は準決勝での劇的勝利からのドラマチックな幕引きに、「こんな劇的な感動はもう死ぬまでないだろう」といった声も上がった。決勝戦、9回に大谷投手がトラウト選手から三振を奪って優勝が決まると球場は総立ちとなり、抱き合ったり飛び上がったりして喜びを爆発させていた。そして「侍ジャパン」は、世界一の歓喜の中でも敬意を忘れなかった。3大会ぶりに頂点にたった侍ジャパンは、三本間にそって一列に並び、深々と一礼。戦い終えたベンチを見ると、一片のゴミすらない綺麗な状態だった。まさに、筋書きのないドラマが展開された今回のWBC。この勝利に、日本中が歓喜の渦に包まれた。決勝のテレビ視聴率は平日の朝にもかかわらず、50%に迫ったという。世界の評価も「日本はどの世界大会において、とても素晴らしい。選手たちはどんなに地獄のような競争を繰り広げても、相手には敬意を払い続ける。それでいてファンはとても情熱的で、球場を着いた時よりも綺麗な状態で帰っていく」
(ニューヨークタイムズ)これほど世界の人々を感動させる「スポーツ」。その精神は、勝利を目指して努力を続け、勇気を持って挑戦し、チームメイトや対戦相手をリスペクトし、自身の最大限の力を発揮し、試合を楽しむことにある。しかし、今回も負けた腹いせに心ない振る舞いをする隣国。世界に発信され、同じアジアに暮らす人間として本当に情けなく恥ずかしい思いをしている。3月8日から2週間、テレビで観戦していても、まるで自分がプレーしているかのような緊張感で応援した。素晴らしい感動をありがとうと心から伝えたい
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第2230号「値上げ」ラッシュが世の中を変える
2023.03.15
 一昨日のお昼、食事をとるため商店街に向かった。よく行く中華料理のチェーン店「王将」のカウンターに座り、天津飯を頼んだ。「それ、ありません」と素っ気ない返事。で、気を取り直し、芙蓉蟹を頼む。卵がないんで卵料理はできませんと、当たり前のような顔をして断られた。その話を夜、居酒屋のカウンタでーで友人にすると、卵は無いんじゃなくて、値段が釣り上がって、儲けが取れないから断られたんだよと諭された。でも商売をしている以上、無いではすまない。今やお客さんより、周辺の事情の方が大切なことと知らされた。食材が少し上がったからといって、メニューから外してしまう。そこを何とかして、がんばるのが商売人だろうと思う。料理を生業(なりわい)とする人間として、最低限のモラルといささかの矜持もないのかと、本当に情けなくなってしまった。さて、世の中はモノ不足と物価の高騰が続いている。給与が上がる世の中ではないから、暮らしが日々、圧迫されつつあるのを実感している。今年に入って、コロナ禍による経済の低迷からようやく抜け出しつつはあるが、昨年後半から、堰を切ったようにあらゆる方面で、価格の引き上げが始まった。今も値上げの波はまだ収まりそうにな
い。その理由のひとつが、コロナ禍において、米ドルに対する円のレート問題。ロシアのウクライナ侵攻という有事によるドル買いとアメリカFRBの金融引き締め策が重なりドルの価格が急上昇し、昨秋にはついに1ドルが150円台となってしまった。つまり、1年の間に単純計算で35%以上輸入コストが上昇したことになりる。これは食料品や工業製品などで原材料を輸入に頼っている業種にとって企業努力だけではどうしようもないレベルであり、値上げはやむを得ないといえる。現在は1ドル=130円前後で推移しているが、それでも2021年と比較すればまだドル高であることは変わらず、先行きが見えないこともあって、今年も輸入コストが高い状態が続くものと見られる。最近の動向で目立っているのは、「物価高倒産」が引き続き高水準で推移していることであり、原料や燃料、原材料などの「仕入れ価格上昇」、取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかった「値上げ難」などにより、収益が維持できずに倒産に至ったケースが目立っている。ともあれ、世の中を覆う「値上げ」ラッシュの波にどう立ち向かうのか。業界として、その中の企業も含めて対応力が問われる時期を迎えている。
time.png 2023.03.15 10:47 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column
第2229号 各地のイベントは業界の力の源だ
2023.03.01
 2月末の土曜日、出社してこのコラムを書いている。昼食をとるため、会社から徒歩1分の至近距離にある天神橋筋商店街に向かった。いつものことながら、どこから人が湧いてくるのかというぐらいの混みようである。休日にすることのない中年夫婦を筆頭に、韓国からのインバウンドの人達が通りを闊歩している。地方のシャッター通り商店街を見慣れている人たちにとっては、驚きの光景だろう。しかしながら、この人たち、お店の人の話によるとほとんど何も買わない、店を覗くこともしない、ひたすら歩いているのだそう。モノを買う目的の人たちは、心斎橋筋か阪急や大丸百貨店に行くという。
 コロナ禍の3年間、大阪からほとんど外に出ない暮らしが続いている。久しぶりの新幹線、車で渋滞する道路、人で溢れかえるイベント会場。どれをとっても懐かしく、やっと普通の生活が戻ってきたことを感じる。思い起こせば、東京の日本ホビーショー、名古屋のハンドクラフトフェア、ギフトショー、そしてOSAKA手づくりフェア、広島手づくりフェアと、それらのすべてが無くなってしまった時期があった。その間、各地のイベントはリアルでの開催、オンラインによる開催、リアルとオンライン2本立てでの開催の3通りで行われたが、その中でも、オフィスや自宅にいながらオンライン上で展示会や見本市に参加できる「オンライン展示会」には救われてきた。また、さまざまなイベントの延期・中止も経験したが、展示会はあくまでリアル開催であってほしいと思う。
 開催されることが当たり前のように感じてきた展示会だが、コロナ禍にあっては、その裏にある主催者の並々ならぬ労力を感じる。まして、主催が地元の業者(小売店、問屋など)なら、その思いには一入のものがある。
 わが国で、手づくり関連のイベントがはじめて開かれたのは、東京や大阪ではなく、京都だったと記憶する。新聞を紐解いても、1979年(昭和54年)に京都市勧業館(現在のみやこめっせ)で開かれ、1万人を動員したとある。そして1980年代に入って日本ホビーショーがスタート。以後50年近くの歳月が流れたが、コロナ禍を除いて途切れることなく開催されてきた。とりわけ、業界のイベントには、ハンドメイドを通して人が集うことの温かさ、楽しさ、そしてやさしさをアピールする力があり、多くの手づくりファンを魅了し続けてきた。展示会の持つパワーは業界を支えるひとつの柱となっており、その価値はこれからもますます大きなものとなるように思える。
time.png 2023.03.01 13:20 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column

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