第2223号 12月8日は「針供養」の日
2022.12.01
世の中には、人々によって受け継がれてきた伝統行事がある。その一つに「針供養」があり、京都など西日本は12月8日に、東日本は2月8日に行われることが多い。小欄も10年ほど前まで、毎年、京都の北西、岩倉地区にある針神社に取材をかねて出かけていた。当日は、針に関連する業者や和洋裁学校、ファッション専門学校、地元の人達が集まり、神官の祝詞のあと、使い古した針を豆腐やこんにゃくに針を刺して供養する。この2月8日と12月8日を「事八日」ともいい、針に限らず、日頃お世話になっている道具を片付け、1日仕事を休んで感謝を捧げる。日本では古代よりさまざまな物に魂が宿ると考えられていたので、針以外にも、人形や仏壇、鏡や眼鏡といったものまで供養の対象になっている。
針供養の起源は定かではないが、中国の土地の神様をまつる日に針線(針仕事)を止むという習わしに起因するという説がある。平安時代には貴族の間で行われるようになり、江戸時代に針の労をねぎらい、裁縫上達を願う祀り事として広がったと言われる。針仕事は女性にとって重要な仕事だったため、折れた針や古くなった針に感謝の気持ちを込めて柔らかい豆腐やこんにゃく、もちに刺し、地方によっては、川に流したり、土に埋めたりして供養し、裁縫の上達を願った。
わが国における金属製の針は、大陸からの渡来人の裁縫技術者によって日本に渡来した。『古事記』の崇神天皇の条に「衣の襴に針を刺し通した」と記述がある。平安時代には「市」で針が売られており、庶民はその針で衣服を縫ったとされる。持ち運びしやすく安価に販売できることから、日本の中世において「針売り」は手軽にできる職業とされ、太閤秀吉が若い頃、武士になる前、尾張地方で針売りをしていたという話も残っている。
昔は、着るものはすべて女性の手によって縫われており、中でも仕立屋に雇われて衣服などを縫う女性をお針子という。日本では,近世に裁縫を〈お針〉とか〈針仕事〉と呼ぶようになり,江戸時代には大名などの衣服を仕立てる呉服所で,針妙と呼ばれる裁縫をする女性が働いていた。裁縫技術は,江戸では家庭で身につけるのが一般的であったが,上方では縫物師のところや寺子屋でも習得した。明治になると,1872年の学制制定以降,小学校や女学校,裁縫教育を中心とする女子教育機関で習ったり,仕立屋で身につけたりした。今もお針子という職業があり、一方で家庭での裁縫は、ホームソーイングと呼び方こそ変わったが、趣味のひとつとして連綿と受け継がれている。
針供養の起源は定かではないが、中国の土地の神様をまつる日に針線(針仕事)を止むという習わしに起因するという説がある。平安時代には貴族の間で行われるようになり、江戸時代に針の労をねぎらい、裁縫上達を願う祀り事として広がったと言われる。針仕事は女性にとって重要な仕事だったため、折れた針や古くなった針に感謝の気持ちを込めて柔らかい豆腐やこんにゃく、もちに刺し、地方によっては、川に流したり、土に埋めたりして供養し、裁縫の上達を願った。
わが国における金属製の針は、大陸からの渡来人の裁縫技術者によって日本に渡来した。『古事記』の崇神天皇の条に「衣の襴に針を刺し通した」と記述がある。平安時代には「市」で針が売られており、庶民はその針で衣服を縫ったとされる。持ち運びしやすく安価に販売できることから、日本の中世において「針売り」は手軽にできる職業とされ、太閤秀吉が若い頃、武士になる前、尾張地方で針売りをしていたという話も残っている。
昔は、着るものはすべて女性の手によって縫われており、中でも仕立屋に雇われて衣服などを縫う女性をお針子という。日本では,近世に裁縫を〈お針〉とか〈針仕事〉と呼ぶようになり,江戸時代には大名などの衣服を仕立てる呉服所で,針妙と呼ばれる裁縫をする女性が働いていた。裁縫技術は,江戸では家庭で身につけるのが一般的であったが,上方では縫物師のところや寺子屋でも習得した。明治になると,1872年の学制制定以降,小学校や女学校,裁縫教育を中心とする女子教育機関で習ったり,仕立屋で身につけたりした。今もお針子という職業があり、一方で家庭での裁縫は、ホームソーイングと呼び方こそ変わったが、趣味のひとつとして連綿と受け継がれている。
第2222号 値上げの秋がスタート
2022.11.15
食べるものが美味しいシーズンがやってきた。食欲の秋到来である。世間で言うところの「グルメ」ではないが、昔から言われる食いしん坊なのである。したがって、安くて旨いというものがあれば、少々遠いところであっても出かけて行く。昼飯も例外ではなく、昼休みの短い時間でも、地下鉄や電車で親子丼などを食べに出かける。食い倒れの町、大阪には、その安くて旨いところがワンサカとある。年に何回か行く東京にも、金さえ出せば旨いものはいくらでもあるが、旨いものは高いという経済原理が働き、そこそこのレベルで手を打っているのが実情である。ついでに言えば、名古屋は、なかなかのグルメの町である。手羽先、味噌カツ、ひつまぶし、名古屋コーチン、きしめんなど、他府県の人が一度は食べてみたいという食べ物が目白押しだ。これをB級グルメと称して一段下に見る向きもあるが、食べ物にA級もB級もないと常々考えている。
今年の秋はまた、値上げの秋でもある。日本中に「安さ」が溢れ、デフレ状況が長く続いた平成の30数年。その代わり給料も上がらず、経済面からみれば、平穏な時代でもあった。世界的に見ても物価が高いといわれた日本は、賃金を含めて先進国の一員というにはほど遠く、見劣りする位置にいた。この状況で起ったのが、高い労働力や技術力の海外への流出で、それによって国内に停滞が生まれ、何事もなく静かに過ぎ去ったかのように思えた平成の30年間に、日本は様変わりしてしまったのだ。
そんな長い物価の停滞期を経て、今年の秋は原材料価格や物流費の高騰を受け、食品・サービスなど幅広い分野で値上げの動きが広がっている。原材料価格や物流費の高騰、円安などに直面する企業の値上げが止まらない状況が出始めているのだ。その動きは食品・生活用品メーカーや外食チェーン、コンビニエンスストアなどに広がっている。昨秋に比べると食品の値上げ率は大きく、例年と比較しても引き続き「値上げラッシュ」といえる状況は続いている。
11月に入って、値上げはまず食関連から始まった。帝国データバンクの調査によれば、 食品メーカー105社で833品目、牛乳など日配品の値上げによって「インフレ」ともいえる状況に入っている。価格改定率は平均で14%に達し、原材料高や急激に進んだ円安を反映した夏から秋以降の大幅な価格引き上げが、全体の値上げ率上昇を招く要因となっている。今秋の値上げが、静かだったわが国の経済にどう影響していくのか。注視していく必要がある。
今年の秋はまた、値上げの秋でもある。日本中に「安さ」が溢れ、デフレ状況が長く続いた平成の30数年。その代わり給料も上がらず、経済面からみれば、平穏な時代でもあった。世界的に見ても物価が高いといわれた日本は、賃金を含めて先進国の一員というにはほど遠く、見劣りする位置にいた。この状況で起ったのが、高い労働力や技術力の海外への流出で、それによって国内に停滞が生まれ、何事もなく静かに過ぎ去ったかのように思えた平成の30年間に、日本は様変わりしてしまったのだ。
そんな長い物価の停滞期を経て、今年の秋は原材料価格や物流費の高騰を受け、食品・サービスなど幅広い分野で値上げの動きが広がっている。原材料価格や物流費の高騰、円安などに直面する企業の値上げが止まらない状況が出始めているのだ。その動きは食品・生活用品メーカーや外食チェーン、コンビニエンスストアなどに広がっている。昨秋に比べると食品の値上げ率は大きく、例年と比較しても引き続き「値上げラッシュ」といえる状況は続いている。
11月に入って、値上げはまず食関連から始まった。帝国データバンクの調査によれば、 食品メーカー105社で833品目、牛乳など日配品の値上げによって「インフレ」ともいえる状況に入っている。価格改定率は平均で14%に達し、原材料高や急激に進んだ円安を反映した夏から秋以降の大幅な価格引き上げが、全体の値上げ率上昇を招く要因となっている。今秋の値上げが、静かだったわが国の経済にどう影響していくのか。注視していく必要がある。
第2221号 食欲の秋に「食品ロス問題」を考える
2022.11.01
秋がやってきたと思っていたら、今朝(26日)は10度を少し上回る寒さで、ジャケットを羽織って出た。街行く人もすっかり秋の装いに変わっている。数日前まで半袖でもよかったから、一気に季節が変わってしまった。ひと昔前まで、日本は四季がある美しい国だと言われてきたが、最も過ごしやすい春と秋の期間ははどんどん短くなっているようだ。
さて、秋はまた、食欲の増すシーズンでもある。昨日、食堂で和食定食を注文したら、吸い物の中に、爪の先ほどの松茸のかけらが入っていた。季節ものなので、ありがたく頂戴した。わが国では、毎日3食を当たり前のように食べているばかりか、飽食の時代ともいわれ、今、食べ物を粗末に扱ってしまっている。以前、私達が育ってきた戦後には、ひと粒の米を残してもきつく叱られたものだ。まさに隔世の感がある。
その一方で、今この時も飢餓に瀕している子供、達が世界中に存在する。皮肉なもので経済の発展とともに増加したのが食品廃棄物である。中でも「本来食べられるのに廃棄される食品」を食品ロスと呼ぶ。イメージしやすいもので言えば、形が崩れたりした規格外の加工食品、賞味期限切れ加工食品、さらに家庭、飲食店での食べ残しなども食品廃棄物となる。
日本では今、一体どれほどの食品ロスがあるのか。今年6月の農林水産省発表の資料によると、廃棄物処理法における食品廃棄物は、事業系が275万トン、家庭系が247万トンと計算されており、合計で事業者の食品廃棄物は1,624万トン、全体の食品ロスは522万トンと言われている。これはあまりイメージできない重さで、キログラムに直すと52億2千万キログラム。10kgのお米が5億7千2百万袋分の計算になる。一般廃棄物処理費用は年間2兆円にも及ぶとも言われている。
私たち日本人は、食品においてかなり厳しく品質を求める傾向があり、賞味期限6カ月の食品の場合、製造日から賞味期限までの合計日数の3分の1を経過した日程までを納品可能な日とし、3分の2を経過した日程までを販売可能な日(販売期限)とする。近年はこのルールが「期限に合理的根拠はなく、食品や資源のムダにつながる」という理由から見直しが検討され、少しずつ改善に向けて動いている。
食品ロス問題。消費者が正しい知識を持って「もったいない」「まだ捨てるべきではない」と自ら商品を評価・判断していき、意識改革をしていくことが、問題解決に一番大きな力となるものと見られる。
さて、秋はまた、食欲の増すシーズンでもある。昨日、食堂で和食定食を注文したら、吸い物の中に、爪の先ほどの松茸のかけらが入っていた。季節ものなので、ありがたく頂戴した。わが国では、毎日3食を当たり前のように食べているばかりか、飽食の時代ともいわれ、今、食べ物を粗末に扱ってしまっている。以前、私達が育ってきた戦後には、ひと粒の米を残してもきつく叱られたものだ。まさに隔世の感がある。
その一方で、今この時も飢餓に瀕している子供、達が世界中に存在する。皮肉なもので経済の発展とともに増加したのが食品廃棄物である。中でも「本来食べられるのに廃棄される食品」を食品ロスと呼ぶ。イメージしやすいもので言えば、形が崩れたりした規格外の加工食品、賞味期限切れ加工食品、さらに家庭、飲食店での食べ残しなども食品廃棄物となる。
日本では今、一体どれほどの食品ロスがあるのか。今年6月の農林水産省発表の資料によると、廃棄物処理法における食品廃棄物は、事業系が275万トン、家庭系が247万トンと計算されており、合計で事業者の食品廃棄物は1,624万トン、全体の食品ロスは522万トンと言われている。これはあまりイメージできない重さで、キログラムに直すと52億2千万キログラム。10kgのお米が5億7千2百万袋分の計算になる。一般廃棄物処理費用は年間2兆円にも及ぶとも言われている。
私たち日本人は、食品においてかなり厳しく品質を求める傾向があり、賞味期限6カ月の食品の場合、製造日から賞味期限までの合計日数の3分の1を経過した日程までを納品可能な日とし、3分の2を経過した日程までを販売可能な日(販売期限)とする。近年はこのルールが「期限に合理的根拠はなく、食品や資源のムダにつながる」という理由から見直しが検討され、少しずつ改善に向けて動いている。
食品ロス問題。消費者が正しい知識を持って「もったいない」「まだ捨てるべきではない」と自ら商品を評価・判断していき、意識改革をしていくことが、問題解決に一番大きな力となるものと見られる。