第2243号 「値上げの秋」がスタートする
2023.10.01
 「今年の夏は暑かった」。毎年、秋を迎えると口をついて出る言葉だが、今年は正真正銘、掛け値なしに小欄の人生の中でも、最も暑い年だったように思う。昔から暑さ、寒さも彼岸までというが、最近は秋の訪れはもっと遅く、11月ごろまで待たねばならなくなってしまった。日本は四季のある国といわれてきたが、今や亜熱帯地方に属するような気候の国になっているような気がする。春夏秋冬、その季節ごとの情緒は薄れ、季節の移ろいの中で感じる微妙な趣きも感じとることがなくなってきた。それもこれも地球温暖化のせいなのだろうか。
 時が巡る中で、今年の秋はまた、値上げの秋ともいわれ、あらゆるものの物価上昇が止まらない。急速な円安も進行し、年度後半スタートとなる10月は、食料品を中心に記録的な値上げの秋になりそうだ。さらに、この10月から暮らしに関わるモノやサービスの価格、制度が変わる。原材料の高騰で食料品は値上げが相次ぎ、秋は家計に厳しいスタートとなる。制度的には、土曜日の普通郵便配達が休止となるほか、NTTドコモの携帯電話解約金の廃止なども予定されている。
 食料品では、世界的な需要拡大や主産地の天候不順による原材料価格の上昇が響いて、山崎製パンは、一部の和洋菓子の出荷価格を平均で7.0%引き上げた。マーガリンなどの小売価格も5〜10%上がる。家庭向けレギュラーコーヒーの店頭価格が20%程度上昇する見込みという。
 輸入小麦の値上がりから、小麦粉、食パン、うどんなどは年末にかけて値上がりしそうだ。値上げはレジャーや嗜好品でも進む。東京ディズニーランドでは、大人1日券の最高料金が700円高い9400円となる。紙巻きたばこでは1本1円(1箱20円)の増税に併せ、メーカーが一斉に値上げを実施。日本たばこ産業の「セブンスター」は1箱40円高い600円となる。
 このように、国内の値上げラッシュが10月にピークを迎える。食品だけで6500品目超が10月の値上げを予定しており、都市ガスや火災保険料といった生活と密接に関係する料金もアップする見通しだ。8月の消費者物価指数上昇率が約31年ぶりの水準に高止まりする中、「値上げの秋」に家計は、どうなるのだろうか。もちろん業界関連商品も値上げは必至の状況で、今後の売れ行きにどんな影響が出てくるのか、現時点では判断がつかない。この業界、コロナ禍では、むしろ追い風が吹いて売上げを伸ばすところが多かったが、今回の値上げの洗礼はそんなに甘いものではなさそう。しっかりとその行方を見守っていきたい。
time.png 2023.10.01 10:30 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column
第2242号 イベントこそ業界のパワーの源だ
2023.09.15
 コロナ禍の影響で2020年、2021年と2年間あらゆるイベントの開催が見送られてきた。昨年に入って、各地で続々と再開の動きが出始め、4月末にビッグイベント「日本ホビーショー」も開催されたが、時間制による入場制限もあって、コロナ前とは程遠い、盛り上がりに欠けるイベントとなった。
 その後のイベントはリアルでの開催、オンラインによる開催、リアルとオンライン2本立てでの開催の3通りで行われてきた。その中でも、オフィスや自宅にいながらオンライン上で展示会や見本市に参加できる「オンライン展示会」の存在が大きくクローズアップされた。さまざまなイベントが軒並み延期・中止になっている今、これまでBtoBでの商談に欠かせなかった展示会での対面商談も「オンライン」へとシフトした。しかし、展示会はあくまでリアルであってほしい。直接手にふれて、目で確かめてこそ価値のある展示会と思う。
 10月に東京と大阪で行われるYKKファスニングクリエーションでは、オンライン展においては、商品の魅力をYKK社員が動画で伝える。リアル展では実際に商品に触れることでこだわりのポイントを体験してもらう。このオンライン展示会は登録不要で自由に閲覧できる。
 東京会場では学生対象のファッションデザインコンテスト「YKKファスニングアワード」の入選作品を披露するファッションショーが行われる。YKKの研究開発部門であるテクノロジー・イノベーションセンターの取り組み=アパレル産業における持続可能な社会の実現に向け、これまで廃棄されていたファスニング商品を回収し、新たな「資源」として循環・リサイクルさせるクローズドループの実現へ向けた取り組みを紹介する。
 昨年9月、OSAKA手づくりフエアが3年ぶりに開かれた。この日を待ち望んでいた人達が会場に溢れ、出展者の応対にも熱がこもった。久しぶりの光景が眼前に広がる。出かける手間が省け、オンラインでさまざまの新しい情報が手に入る時代とはいえ、やはり、リアルに勝る展示会はない。とくに、楽しそうな人達を目の辺りにすると、取材を忘れて気持が高ぶる。今回のOSAKA手づくりフェアには、まさに出展者、来場者が一体となった光景が繰り広げられた。
 この会場の雰囲気が実際の「売りの場」につながってほしいと切に願う。これから本格化する手づくりの秋が実りあるシーズンになってほしいものだ。
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第2241号 「値上げラッシュ」の中、秋が始まる
2023.09.01
 わが町にある天神橋筋商店街は今日も人で溢れ返っている。それもこれも中国人を筆頭に、アジア各国、欧米からのインバウンドが増えたからで、一瞬、どこの国にいるのか定かでないほどの人達が行き交っている。さぞかし商店街のお店も潤っていると思いきや、彼等はただ歩いているだけ、爆買いをしていた以前と違ってモノを買わなくなったという。食堂でも、子供連れの一家族で一人前、二人前の注文を平気でする。そんな人達をかき分け昼食に出ると、これがまた大変、2時頃まで、まずくて有名、地元の人ならお金をもらっても入らない店まで一杯になっている。まさに昼食難民と化すのだ。ともかく、大声で喋る、広がって歩く、売り物を触りまくるといったことも含め、この人たち、厄介な存在なのである。
 そんな中、9月の声を聞いて、値上げの秋がスタートする。今年の秋は原材料価格や物流費の高騰を受け、食品・サービスなど幅広い分野で値上げの動きが広がっている。原材料価格や物流費の高騰、円安などに直面する企業の値上げが止まらない状況が出始めている。その動きは食品・生活用品メーカーや外食チェーン、コンビニエンスストアなどに広がっている。昨秋に比べると食品の値上げ率は大きく、例年と比較しても引き続き「値上げラッシュ」といえる状況は続いている。
 今秋の値上げが、わが国の経済にどう影響していくのか。食品や日用品、外食の値上げが続いている。日経POS情報を分析すると、店頭価格も上昇傾向にある。原材料や物流費、エネルギー価格の上昇の影響が長引く一方、メーカーはコスト上昇分を十分に転嫁できておらず、今後も値上げが続きそうだ。今年7月の値上げは、「パン」が全食品分野で最多だった。品目数でパンが最多となるのは、同じく輸入小麦価格改定の影響でパンが一斉値上げとなった昨年7月以来、1年ぶりとなる。「加工食品」はパックごはんやレトルトカレーなどが中心に値上げが予定されるほか、「調味料」もめんつゆ製品やスパイス製品で値上げとなる。「レトルトカレー、食用油、紙おむつなどの商品から電気代、高速道路料金まで、身の回りで値上げが相次いでいる。原油高や原材料高に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻や円安も響いており、家計への影響は計り知れない。
 現実的な話はさておき、芸術の秋、食欲の秋、味覚の秋、ファッションの秋という言葉があるように、秋は楽しみが多い季節。四季がある国だからこそ感じる、暑い夏と寒い冬の間の束の間の時間を有意義に過ごしたいものだ。
time.png 2023.09.01 10:23 | pmlink.png 固定リンク | folder.png Column

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