第2262号 「本のある生活」は楽しい
2024.07.01
 以前にも取り上げたことがあるが、日本人の文化水準の低下を防ぐためにも、全国における書店の減少を食い止めなければならない。出版文化産業振興財団の調査によれば、昨年9月時点で、全国の「書店ゼロ」の市町村は26.2%にのぼる。
 全国的にも、1999年に2万2000軒あった書店は、2020年には約1万1000軒と20年間で半減した。さらに、その流れは加速している。全国的に見ても、書店数は減少の一途をたどっている。今、小欄はネットで本を取り寄せることが多い。ネットでは、自分の好む情報に囲まれ、周りが見えなくなる状態だ。それとは逆に、書店では目的以外の本もたくさん目に入る。流行を感じるし、他の人たちの考えも意識する。そういう文化の重要性を感じる。
 1960年代は、ひとつの街に何軒も「本屋さん」があった。学生だった当時は少年漫画の全盛期で、発売日には分厚い週刊漫画誌が店頭に並んでいた。そんななか、小欄は本も読むし、漫画にも目を通した。そんな本屋さんが、街から急激に姿を消しているのだ。
 2005年度には1万8608軒の店舗があったが、ごく最近には1万873店舗と、約20年で8000店舗近く減っている。紙書籍の市場規模はこの3年間で7%もダウンした。1.2兆円という数字は、ピーク時と比べると半分以下の水準である。本の単価自体は上昇傾向にあることを踏まえると、売れている冊数はもっと落ち込んでいる。
 年齡によって増減があり、ここ数年は低下傾向にあるが、本を読む人が20年前の半分になったというようなことはない。たしかにアマゾンは売り上げを伸ばしているようだが、その影響は限定的なものである。もともと書店は大半が個人商店として立ち上がってきた。日本に活字や本のある生活が新しい文化として芽生えていった戦後すぐの時期、日本全国のいろんな街の駅前に小さな本屋ができて、日本の出版文化を担ってきた。一方で、時を経て電子書籍が誕生し、出版界も大きな変貌をとげるが、これも、紙の本を読んでいた人がそのまま電子で読むようになったかといえば、コミック以外はそうでもない。紙の本が減った分、電子書籍が伸びているのでなく、本を読むこと自体が減っている現実がある。
 書店の数はその国の文化度のバロメーターともいわれる。今はいろんなメディアがあり、情報も知識も氾濫している。その中核を担ってきた紙媒体の衰微と書店の減少は切っても切れぬ相関関係にある。そして、その減少は国の未来にとっても由々しき問題なのである。
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第2261号 新しい消費の形「トキ消費」と「イミ消費」
2024.06.15
 コロナ禍以降、日本人の消費の形が様変わりしたといわれる。とりわけ、新たな価値が求められるようになったことで、「モノ」から「コト」への変化が顕在化してきたという。「モノ消費」は、商品・サービス自体に価値を見出す消費スタイルのことで、商品の品質や機能を重視し、カタチのあるモノの消費活動のこと。戦後の日本は生活用品を揃えるためのモノ消費の時代が続いたが、やがて「心」を満たす消費にシフトした。それを「コト消費」という。コト消費は、商品・サービスによって得られる「体験・経験」に価値を見出すもので、旅行やリラクゼーションなど、カタチのないことへの消費活動を指す。たとえば、旅行先のご当地グルメを写真に撮って、SNSやブログにアップ。コメントや「いいね」などの反応があったら嬉しい気持ちになってしまう。その反応も含め「心」を満たす事柄でもある。
 この「モノ」から「コト」へ消費が変化した背景として、日本国内における消費の「成熟化」が背景にある。テレビやエアコンが発売された当時は、生活を豊かにしてくれるモノとして機能が重視されていた。
 現在は、必要な家電などはほとんどの人に行き渡り、機能的な価値で選ばれにくくなっている。その意味では、モノ自体への価値の低下が、コト消費に繋がったのだともいえる。
 「モノ」から「コト」へ消費が変化した背景として、「国内消費」と「インバウンド消費」が挙げられる。日本国内における消費は、「成熟化」が背景にあり、最近は「トキ消費・イミ消費」という新たな消費にも注目が集まっている。
 SNSで、多くの人々が「コト消費」を拡散するのが当たり前になってきて、その結果、自分が体験しなくても多くの情報が手に入るようになってきた。
 「トキ消費」とは、イベントやフェスなど「その日」「その時間」「その場所」でしか体験できない事柄に参加する消費行動で、ライブ配信やWebセミナーなどオンラインのイベントもトキ消費に含まれる。さらに「イミ消費」とは、商品を通じて社会や環境に貢献する消費行動のことで、「モノ」を購入する「コト」を体験するだけではなく、そこに社会的・文化的価値「イミ」を見出す消費スタイルも注目を集めている。
 これらの例には、近年の『SDGs』への関心の高まりも影響しており、クラウドファンディングやふるさと納税など、イミ消費の代表的な例として、今後の消費の動きをリードしていくものとなりそうだ。
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第2260号 もっと「本」を読もう
2024.06.01
 昨日、地下鉄の中で本を読んでいるいる中年女性を見かけて、どっきりした。寝ている人以外は99%がスマホを見ている中での出来事だったので驚いたのだ。今、人は本を読まなくなった。全国の書店数も、それに比例して減っている。さらに書店の閉店も相次いでいる。この10年間で、全国の書店の数はおよそ4600店あまり減少し、とりわけ小規模店舗が大きく減少した。どにでもあった町の本屋さんがどんどん減って、直近では8169店舗と、1万店を割っている。
 本を読まない国民は低能化が進行し、ひいては国力の低下にもつながるという。かつて「書店数の減少」「総坪数の増加」の流れがあった。ところが2010年度をピークにその流れは変わり、店舗数だけでなく総坪数まで減少しはじめているのだ。1年だけなら単年でのイレギュラーな動きとの解釈もできるが、直近の2023年度に至るまで継続してマイナスへの変化が生じている。
 日本人の読書時間は、世界の中でも最低ランクであるというデータが少し前に発表された。読書時間の短さ以外にも、小学生から高校生までの読書時間は学年が上がるにつれて少なくなる傾向にあり、全体のほぼ半数が平日には読書をしていないことが明らかになった。調査は2015年から2022年まで毎年7〜9月に2万組前後の親子を対象に行われ、回収率は64%だった。2022年の調査では、全体の49%が平日に読書を「しない=0分」と回答した。性別では男子の方が、学校段階別では上の学年に上がるほど0分の割合が多い結果となった。テレビ、パソコンやスマホの利用時間を見ると、電子メディアの時間が大きく増加しても、読書時間は微減にとどまると考えられる。
 子供のころから、絵本、図鑑、教科書、文庫など形を変えて、私たちの身近にある本。そんな本が、なぜ魅力が減ってしまっているのか。基本的には、本というコンテンツ自体は進化している。 しかし、それ以外の娯楽の多様化や、相対的な進化スピードが遅い点が、読書好きを減らした大きな理由となっている。インターネットの影響によって「本を読む時間が減った」と回答する割合は、男女とも世代が上がるにつれて高まる傾向にあり、特に多かったのは40代で、男性は42%、女性では56%が「減った」と回答した。20代から30代の若い世代にとっては、生活環境の中にすでにインターネットが定着していたこともあり、本を読むこと自体が減っているこにはつながらない。
 脳の老化の進行を防ぐためにも、読書の習慣づけをおおすすめしたい。
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