第2314号 イベントで伝える「手づくりの楽しさ」 
2026.09.01
 暑かった夏も過ぎ、9月を迎える。3年前まで9月といえは、大阪の業界人にとってはOSAKA手づくりフェアが行われる月に当たり、報道に携る者としても気忙しい時期を迎えてきた。ところが、イベントのみならず主催団体の組合までもが解散し、消滅してしまった。名古屋組合もイベントも含めて同様の足跡を辿っている。世の中の移り変わりのスピードの早さに戸惑いを感じている。
 毎年、9月第2週の大阪の堺筋本町周辺はおばさん軍団に占拠されてきた。午前10時のマイドームの開場前は2つの大通りとも手芸ファンの女性で溢れ返っていたのだ。メインブースには多くのメーカー、発売元が出展。新商品を中心に、話題の商品や新技法を発表した。また、さまさまのイベントを通して、手づくりの楽しさと感動の心響くイベントを展開してきた。
 その9月、所変わって「第29回手づくりフェアin九州」が12・13日の2日間、福岡市博多区の福岡国際センターで開かれる。毎年2日間で3万人が会場を訪れるビッグイベントだ。今回も「積み重ねた技が、貴方を語りだす。見て!作って!楽しんで!」をキャッチフレーズに、メーカーや小売店が出展する企業ゾーン、手づくりに関する活動をしている個人が出展するクリエーターブース、古布市場、バラエティショップ、インストラクターズブース、さらにセルフバザールなど計200小間を超える出展規模での開催となる。
 会場内イベントでは「トークショー」として、ベルンド・ケストラー(編み物デザイナー)が『失敗作から学んだこと」=デザイナーとして現在に至るキャリアのなかで学んだこと、洋輔(ハンドメイド作家)が「手づくりの楽しさとものづくりの温かさ」=テレビ出演やイベント活動を通じて得た世代を問わないハンドメイドの魅力を語る。 さらに香蘭フアッションデザイン専門学校による特別展示、アーティスト展示ゾーンではパッチワーク・銀粘土・セラミカルドール・グラスアート・創作手工芸、ほかにホビーメイトクラブワークショップやホビッ子ランド、角田まさ子「フアブリックステンシル」が予定されている。
 コロナ禍がきっかけとなって、展示会や見本市のスタイルが大きく様変わりした。しかし、リアルに勝る展示会はない。とくに会場で楽しそうな人達を目の辺りにすると、取材を忘れて気持が高ぶる。
 今月の「手づくりフェアin九州」には、出展者、来場者が一体となった光景が繰り広げられることを願う。
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第2313号 書店が大変なことになっている
2026.08.15
 家でテレビを見ないと決めて半年になる。実践してみて分かったが、生活に何の支障もない。時間ができた分、本を読むようになった。もともと本好きで、2019年、病気で入院するのを機に断捨離を行い、2000册ほどあった蔵書を処分した。古本屋にまとめて9000円で引き取ってもらった。今も月に数冊のペースでゆっくり読書を楽しんでいる。6人兄弟の末っ子で育ち、本に興味を持ち出した小学生の高学年の頃には家の中は兄達の本で溢れ返っていた。そんな環境もあって、自然に本好きな少年に育っていった。
 そんな本好きな人間にとっては、今、出版業界に難問がふりかかっている。本は、文化を下支えし、国力をはぐくむ大事な基盤の存在だが、総務省調べでは、2023年に出た書籍新刊の刊行点数は6万4905点。1日あたり約180点の本が生み出されている。インターネットが普及してデジタルコンテンツも豊富になったが、やはり本のもつ情報の量、深さ、幅広さは図りしれないものがある。
 ところで今、全国の書店数が昨年度末で9993店となり、1万店を割ったことが日本出版インフラセンターの調べで分かった。紙の出版市場の不振の中、街の書店減少に歯止めがかからない状況が続く。同センターによると、昨年度の書店数は2024年度の1万417店から424店減少した。データのある1994年度以降、全国の書店数は1998年度の2万4237店をピークに減少に転じ、インターネットの普及やネット書店の伸長もあり、ピーク時の4割余りの市場となった。
 国家としても、書店を地域の重要な文化拠点と位置づけており、昨年6月には政府が「書店活性化プラン」を公表した。文化庁の2023年度調査では、「1カ月に1冊も本を読まない」人が全体の6割を超え、読書離れが進んでいるという。本を買う手段もアマゾンなどのネット書店が隆盛で、街の書店にとっては逆風の時代が続いている。こんな状況のなか、ネット書店の浸透も書店を脅かし始めた。出版物の売上が年々減少しているなか、ネット書店の売上は2013年に1600億円だったところ、2022年には2900億円まで伸びている。
 この状況下、このまま書店は街から消えてしまうのか。それとも残っていく道はあるのだろうか。かつて、地方都市の商店街には大小さまざまな書店が並び、地域の人々が日常的に立ち寄る「文化の拠点」として機能していた。近年の「街から本屋が消える」という状況は、国の文化を守っていく観点からもあつてはならない由々しき事態でもある。「若者よ、もっと本を読もう」。
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第2312号 体験を楽しむ「トキ消費」の時代へ
2026.08.01
 7月25日は天神祭の日である。前日の宵宮から街は賑わう。会社と住まいが天神橋にあるため、出かける必要なく祭りを楽しんでいる。毎年130万人以上が訪れる日本三大祭のひとつに数えられる。今年は過去最高の140万人を超える人達が祭りを楽しんだ。ちなみに、あとの二つは京都の祇園祭と東京の神田祭である。そして毎年天神橋一丁目から続く商店街には多くの夜店が並ぶ。
 ここ数年、浴衣姿の若い人達が増えたという。お祭りの愉しみの一つは焼きそばやたこやきを買って食べることにもあり、ささやかながらお金を使う。こうした日常を離れたところでの消費とは別に、消費に関しては新しい形での消費スタイルが生まれているという。
 そして、新しい消費スタイルが生まれるたびに「○○消費」という言われ方がされ、昔から消費の大きな潮流として、所有にお金を使う「モノ消費」、体験にお金を使う「コト消費」。さらに、これらに続く形で、数年前に博報堂生活総合研究所が「トキ消費」という新たな概念を提唱した。このほかにも、「エシカル消費」「イミ消費」「シェア消費」「ファスト消費」「ソロ(おひとりさま)消費」など、「○○消費」と名のつくスタイルは数多くある。
 一方で、「モノ消費」と「コト消費」は、消費者がそれぞれに費やす支出額のバランスこそ変化しても消費行動の基盤としてあり続けている。また、「コト消費」は「モノ消費」からの価値観のシフトと捉えられ、「トキ消費」はその「コト消費」をさらに発展・深化させたものであるため、他の「○○消費」とは一線を画す存在であるといえる。
 「トキ消費」とは、博報堂によると、「同じ志向を持つ人々と一緒に、その時、その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ消費」ということであ具体的な例としては、音楽フェスやライブ、聖地巡礼、アイドル総選挙、ワールドカップ観戦、コラボカフェ、ファンミーティング、応援上映、さらにはハロウィンイベントへの参加などが挙げられる。こうした「トキ消費」の中でも重要なのは「今ここでしか体験できない」「同じ体験は二度と味わえない」という非再現性。つまり、体験の限定性に意味を見出すという点で、バブル期に見られたモノ中心の消費とは大きく異なる。
 その背景には、特に若い世代を中心に、モノのスペックよりも心に残る体験や他者と共有できる体験に価値を見出すようになったことが挙げられる。その意味で、業界とも関連の深い「推し活」の出番がやってきたといえる。
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