第2307号 自転車の価値が見直される
2026.05.15
  暑くもなし、寒くもなし。一年で一番過ごしやすい季節を迎えている。今年もゴールデンウィークには、各地の行楽地は大勢の人出で賑わった。高速道路は朝早くから大渋滞が発生し、目的地に着くまで何時間もかかったという人が多かった。その様子は連日テレビのニュースでも流された。それでも人々はその便宜性ゆえに車を使ってしまう。
 そんな状況下、自転車の価値が見直され、コンスタントに売れ続けているという。とくに大阪は自転車の保有率が高く、京都に次ぐ全国2位の座を守っている。もともと日本は世界屈指の自転車保有台数(2024年時点で約7,200万台、人口の約54%)を誇る「自転車大国」で、2人に1人は所有し、日常の通勤・通学・買い物の足としてママチャリが広く普及している。そんな中、保有率が高い都道府県は 京都府、大阪府、埼玉県が上位にランクインしている。
 その便利な自転車。1950年代、戦後の復興が進み道路整備が進展する中で、人々に余暇を楽しむ余裕が生まれ、自転車利用が広がった。平均月給が2万円から3万円だった時代、自動車は30万円から40万円と庶民には高嶺の花だった。一方、自転車の価格も10万円程度と、安くはなかったが、若者がサイクリングチームを組んで東京から郊外へ半日かけて走る、あるいは一週間かけて東海道を制覇するといった活動が盛んに行われた。高度経済成長を迎え、1970年代に入ると、いわゆる「ママチャリ」が開発され、自転車の価格が下がり、一般家庭への普及が加速する。中高生の通学手段として需要が高まったのもこの頃。日本で保有される自転車の台数が急激に増加し、以降自転車文化は成長を続けることになった。
 そして、自転車の利用は近年、多彩な広がりを見せている。震災時の自転車の活躍や節電意識の向上、また健康意識の高まりなどを受けて、自転車通勤がブームになっている。趣味の領域では、長い距離を走ったり街を自転車でぶらぶらと散歩する「ポタリング」が流行。また流通業での自転車利用やレンタサイクルなど、自転車の活用方法も広がっている。自転車文化が成長した要因として、「自転車歩行者道(自転車と歩行者が共有する歩道)」という概念が生まれた1978年の道路交通法改正で、自転車の通行ルールが定められ、日本では自転車と歩行者が共有して通行する歩道が全国的に増加していった。
 今後、自転車と歩行者が正しく共存できる世の中になることを心から願う。
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第2306号 連休に思う 「休み下手」な日本人
2026.05.01
 4月も半ばを過ぎ、ゴールデンウィークが近づいてきた。JTBが先月に発表した「2026年ゴールデンウィークの旅行動向見通し」によると、物価高などの影響から今年の国内旅行は「1泊2日」の割合が増加し、遠出を控えた「近場・短期」の旅行志向が鮮明になっているという。このゴールデンウィークという言葉は昭和30年代、映画会社が集客目的で作成した宣伝用語である。当時、娯楽の王者であった映画が、正月とお盆に続いてお客さんが入るこの時期を黄金週間と名付け、英語でゴールデンウィークと表現したもので、70年近く経った今も5月の連休はゴールデンウィークと呼ばれるようになった。以前は休日が飛び飛びになることが多かったことから「飛石連休」という言い方がされた時期もあった。
 ところで、この休みがサラリーマンにとって大歓迎されているかというと、そうでもないらしい。「休みの日」に何をしたらいいのか分からない若い人が結構な比率で存在するというのだ。それ以前に約4割の人が休むことに「罪悪感」を持っており、「休み下手」な日本人の姿が浮かび上がる。
 働き方改革が進む中、日本人の「休み方」には課題も多い。仕事を休んでも賃金が支払われる年次有給休暇の取得をめぐる問題もその一つだ。ただ、2019年の労働基準法改正で年5日の有休取得が義務付けられて以降、取得日数や取得率は増加傾向にある。厚生労働省によると、2022年の労働者の有休取得率は62%と初めて6割を超えた。とはいえ、政府が目標としている「25年までに70%以上」の取得には至らず、欧州先進国に比べると依然、低水準なのが実情である。大手新聞社が実施した「有休」に関するネットアンケートでも「取りにくい」との回答が大半を占めた。人手不足を背景に「仕事量が多い」ことを理由に挙げる人が目立つ。
 日本の場合、同僚や上司に迷惑をかけたくないという意識も強く、休暇は周囲に合わせて取る人が多い。さらに、わが国の職場には「休まない社員が良い社員」、それを美徳とする職場環境がある。有休が取りにくい理由にそんな「職場の雰囲気」を挙げる人も多い。
 日本人の休み方の特徴は個人の意志よりも、休み期間の「コマ切れ」と「周囲に合わせる」ことにあるという。欧州の先進国では、長期休暇を組み込んだ年間スケジュールを立てるスタイルが定着している。今後、日本でも雇用側の休むことに対する理解が深まり、働き方改革が正しく機能することが求められる。
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第2305号 「お花見」の春がやってきた
2026.04.15
 5日の日曜日、満開の桜に誘われて、会社近くの大川端まで花見に出かけた。川筋に出ると、歩けないほどの人で溢れ返っていた。ひと昔前は青いビニールシートの上で賑やかに宴会する光景が見られたが、最近はめっきり少なくなった。その変わりに、とくに大阪では中国を中心にインバウンドの人達が増え、枝ごと持って帰るグループに遭遇したこともある。彼らの国では「花見」という優雅かつ繊細な文化は存在せず、そのような振る舞いに至ってしまうのだろうが、日本人にとって端迷惑な話ではある。
 そんな花見の起源については諸説あるが、時代をさかのぼると、奈良時代には貴族が梅を好み、花鑑賞をしていたようで、書物や絵にその様子が残されている。現代では花見と言えば桜を指すが、当時は中国から伝来した梅の花が主流だった。これは、決して桜が好まれていなかったわけではなく、当時の日本人にとって桜が神聖な木として扱われていたためで、「万葉集」には桜を詠んだ歌も残されており、古代神話以前から桜は神の宿る木として信仰の対象ともなっていた。桜の下で宴を開催している宮中の様子は、平安時代中期の名作「源氏物語」にも記されており、平安時代前期に編まれた「古今和歌集」でも、春の歌として桜を詠んだ歌が多く残されている。当時の貴族たちにとって、桜が「春を象徴する花」としてイメージされるようになっていることがうかがわれる。
 時代を経て鎌倉時代に入ると徐々にあらゆる階層に広まっていくこととなる。武士や町人も桜を楽しむようになり、京都では山や寺社などにも桜が植えられたのもこの頃であるといわれている。安土桃山時代には、武士たちが外へ出かけて花見をするようになる。特に豊臣秀吉がおこなった「醍醐の花見」や「吉野の花見」は有名で、吉野にはおよそ5,000人、醍醐寺には1,000人以上が参加したといわれる。
 ところで、桜の木は欧米でも多く植えられているのに、日本の花見のような風習はほとんどない。その理由として、海外では外での飲酒が法律で禁止されているところが多かったり、冷めてしまった料理をそのまま食べる習慣があまりないことなどが挙げられる。桜の下でお酒を飲み、彩り豊かで「冷めてもおいしい」お弁当を囲むお花見は、やはり日本独特の風習といえる。日本人は海外でも「最もマナーの良い観光客」の第1位に選ばれるほど評価が高い。団体でお酒が入っても、節度ある行動がとれる国民なのである。今年も季節を彩る風物詩として大いに楽しんでほしい。
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