第2256号「お花見」に関する一考察
2024.04.01
 2024年もついに北上をはじめた桜前線。開花とともに春の到来を知る。日本の国花ともいわれる桜。桜は春の代名詞であり、古代より日本人のこころに深く影響を与え続けてきた。そんななか、大阪では4月5日から11日までの7日間、北区天満の大川端にある造幣局で「桜の通り抜け」が行われる。構内にある通り抜け通路560mに約140種類のサクラが植えられており、ほかでは見ることのできない珍しい品種も見ることができ、毎年多数の人達が観賞のために訪れる。造幣局では、数多くの品種のうちから一種を「今年の花」として選び、毎年紹介している。今年の花は、人気投票で選ばれた「大手毬(おおてまり)」に決まった。小欄も毎年、天満橋から天神橋までの大川沿いをぶらぶら歩いて、個人的な通り抜けを満喫している。
 桜は、開花から散るまでの期間が2週間足らずで、「花吹雪」となって散り行く姿は人の命の儚さになぞらえられ、その心情が日本人の心をとらえている。その花を愛でるお花見は、奈良時代の貴族が始めた行事といわれており、当初は中国から伝来した梅の花を観賞するものだった。平安時代に入り、お花見の花が梅から桜へと移り変わって行ったといわれる。桜の花でのお花見の起源は「日本後紀」によると、嵯峨天皇が催した「花宴の節」と記され、これがお花見が文献に初めて登場したものとされている。中でも歴史に残る盛大なお花見が、豊臣秀吉により行われたもの。徳川家康などの有名な武将を総勢5000人招いた「吉野の花見」と、醍醐(だいご)寺に700本もの桜を植えて行われた「醍醐の花見」。その壮大な様は権力者としての大きな力を世の中にあまねく見せつけた。
 ところで、桜の木は欧米でも多く植えられているのに、日本の花見のような風習はほとんどないという。その理由として、海外では外での飲酒が法律で禁止されているところが多かったり、冷めてしまった料理をそのまま食べる習慣があまりないことなどが挙げられる。桜の下でお酒を飲み、彩り豊かで「冷めてもおいしい」お弁当を囲むお花見は、やはり日本独特の風習といる。そして春になると、お花見が日本中の至るところで行われる理由のひとつは、日本人のマナーの良さにもある。日本人は海外でも「最もマナーの良い観光客」の第1位に選ばれるほど評価が高い。団体でお酒が入っても、大声で騒がない、節度ある行動がとれる国民なのである。今年も季節を彩る風物詩として楽しみたいと思う。
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