第2209号 新しい消費の形が生まれている
2022.05.01
そういえば最近、ほとんどモノを買っていないことに気づいた。とくに新型コロナウイルス感染症が蔓延して以来の2年と数カ月、着るものは何も買っていない。無理もない。会社と家の往復以外、外出らしい外出とはまったく無縁の日々を送っている。人とも会わない。おしゃれをする必要もない。ふと、何のために生きているのだろうと哲学的思索が脳裡をよぎることもある。
ちょうど2年前、2020年4月に発令された緊急事態宣言を受け、外出機会の減少やリモートワークの普及が進み、自宅で過ごす時間が増加した。これにより人々の購買意欲は自分自身の生活空間を快適に保つ、あるいは自分自身の心身を健康に保つ方向へと向かった。私もまさにその通りで、余分なモノを買い求める意欲が失せてしまったのだ。世間全般も、経済や所得の先行きに不安が生まれたことから、生活に必要のない支出や物の購入を絞るだけでなく、生活必需品の購入についてはできるだけ適切な価格で購入したいというニーズが鮮明になってきている。コロナ禍で消費の形そのものが変わってしまった。店に足を運ぶのではなく、ECサイトを利用して自宅にいながらのショッピングが増加した。家具、家電、食料、衣類など、これまで店頭で購入される機会の多かった品目が便利なECサイトを通じて購入される機会が増えている。感染リスクをできるだけ抑えたいという消費者心理に対して、家まで届けてくれるECサイトの利便性が高く支持されているようになった。このような消費者の変化は、「生活必需品へのニーズの高まり」「適切価格での購入」「ECサイトの利用増加」という形となって現れている。経済産業省が発表した「2021年上期の小売業販売」の調査」において、業態別では「百貨店」「コンビニエンスストア」の販売額が減少し、一方、「総合スーパー」「家電大型専門店」「ドラッグストア」
「ホームセンター」の販売額は増加したという結果が出ている。好調な業態は生活必需品の品揃えが豊富であり、柔軟な特価販売が可能、さらにEC化の動きも百貨店やコンビニエンスストアと比較すると進んでいる状況だ。こういった要因が、それぞれの業態における売り上げの明暗に影響している。「生活に必要な物」を「お得な価格」で、「できればECサイトで買いたい」というのがコロナ禍における消費者の行動・心理の傾向といえる。外での活動よりも、家で過ごす時間に重きを置く傾向への変化をしっかりと把握して、新しいビジネスの形を構築する時期にきたようだ。
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