第2236号「サラリーマン川柳」から時代を読み取る
2023.06.15
 世の中の動きというものは、学者や評論家が難解な言葉を使って論じたものより、楽しく平易な「川柳」などからわかることが多い。とくに、サラリーマン川柳はわずか17文字でその時代が求める価値観に対する人達の悲哀や奮 闘ぶりを表現した歴史的遺産ともいえる。2023年は何が切り取られたのか。エネルギー高、原料価格高騰によるスタグフレーション化で戦う姿か、または小遣い を減らされる父親の悲しい背中なのか。不安定な世界情勢下でも家族の ために最前線で戦い、家庭では縁の下の力持ちとしてのお父さんのかっこいい姿を表現した 作品が選ばれた。 
 このほど、第一生命保険は「サラっと一句!わたしの川柳コンクール」のベスト10を発表した。今回も同コンクールには約8万句以上が集まり、全国約6万人の投票でベスト10が決定した。1位は得票数2754票を獲得した「また値上げ 節約生活 もう音上げ」だった。 この句は、食品や日用品など身の回りのモノの値段が上がる中、長引く節約生活の憂いをストレートかつユーモラスに詠んだ作品。「まさに私生活そのもの」「本当にキツイ」など、値上げに関する共感の声が多数寄せられた。
2位以下は、「ヤクルト1000 探し疲れてよく寝れる」(2196票)、「店員が 手取り足取り セルフレジ」(1836票)、「下腹に 脂肪が集合 密ですよ」(1732票)などが選出された。定番の健康を省みる作品など、日常でのちょっとした出来事をユニークに表現した川柳が支持を集めた。
 また、健康を省みる作品に加え、新型コロナウイルスに感染してしまった時の家族の暮らしを詠んだ作品やセルフレジでの体験談を詠んだ作品など、日常での出来事をユニークに表現した川柳へも共感の声が多数寄せられ、ベスト10にランクインした。
 インターネット経由の投票数を基に年代別に分析したところ、各世代の1位はいずれも「また値上げ 節約生活 もう音上げ」だった。20〜50代では「サイフより スマホ忘れが 致命傷」がいずれもベスト3に入り、スマホが財布以上に欠かせない存在であることがうかがえた。一方、60 代以上では、「店員が手とり足とり セルフレジ」がベスト3にランクイン。セルフレジの操作に戸惑う様子に共感の声が寄せられた。急激な物価上昇の中で節約にいそしむ姿や、物価高をネタとした川柳が数多く入選。たび重なる日用品の値上げに人々は右往左往。そんな苦労をも笑いに変える句が多くの人の共感を呼んだ。庶民は、依然として続く閉塞感の中、川柳で笑い飛ばすしかないようだ。
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