第2203号「バレンタインデー」がやってくる
2022.02.01
今年も、間もなくバレンタインデーがやってくる。いまや、国民の一大行事であり、一億総白痴化現象の先がけともなった行事である。商魂たくましい都心のデパートでは、催物フロアすべてがチョコレート一色に染まる。何を騒いでいるのだと思う半面、この年になっても誰かチョコレートをくれないかなと思ってしまう。ひと昔前、夜な夜な飲み歩いていた頃は、かなりの数の義理チョコをいただいた。知り合いのひとりは、家に持って帰ると、奥さんに問いつめられるので、庭で飼っていた犬にやっていたという。それが元で虫歯になったかどうかは定かではない。そんなバレンタインデー。実は、その贈り物の定番がチョコレートなのは日本独自の文化という。アメリカでは、日本とは逆で男性から女性にプレゼントを贈るのが一般的だそうだ。バレンタインデーの起源には諸説あるものの、キリスト教司祭である聖ウァレンティヌスが殉教した日という説が広く信じられている。その日から1,000年以上経過した14世紀以降、2月14日は恋人同士が贈り物を交換するイベントとして定着していった。聖バレンタインを悼む宗教行事だったバレンタインデーが、現在のように「恋人たちの日」とされるようになった理由についてはいろいろの説があり、その真実にはたどりつけないでいる。日本で初めてバレンタインデーが紹介されたのは、1936年2月12日に神戸で発行された外国人向け英字新聞に掲載された広告だったという。神戸のチョコレート会社が「バレンタインデーには愛する人にチョコレートを贈って愛を伝えましょう」とアピールした、ロマンチックなマーケティング戦略だった。全国的に広がったのは1960年代のようで、チョコレート会社がこぞって「この日は女性から男性へ愛を告白する日」と謳い、ハート形のチョコレートを発売しはじめた。このキャンペーンが女性の心を捉えて徐々に盛り上がり、現在のような一大イベントに成長したのだ。90年代のバブルの頃には、このプレゼント大作戦が過熱しすぎ、中止にする学校も出てきたほどだ。職場や学校での男性の人気のバロメーターとなり、格差がはっきり現れる事象ともなった。ともあれ、それまで中元やお歳暮といった、儀礼的な贈り物文化が中心だった日本にあって、バレンタインデーは個人で物を贈りあうという新しい文化誕生のきっかけともなった。日本では商業ベースに乗せられ過ぎている傾向はあるものの、プレゼントは人の心を和ませてくれる。