第2234号 今日も多くの人で賑わう「天神橋筋商店街」
2023.05.15
日本一長い天神橋筋商店街(南北2.6km)は、今日も多勢の人達が歩いている。毎日、昼過ぎのピーク時はすれ違うのも大変な混雑ぶりを見せる。地方都市のシャッター通り商店街で商売する人達から見れば、なんとも羨ましい光景だろう。商店街というと、大型店との競合やネット通販の台頭で不況に苦しんでいる印象が強い。そんな中、にぎわいを見せる天神橋筋商店街で、まず歩いて実感できるもう一つの特徴が空き店舗の少なさだ。見渡す限り、ほとんどシャッター店舗が見当たらない。天神橋筋商店街は全600店舗もありながら、空き店舗率は4%という。中小企業庁が全国約3200カ所の商店街を調査したところ、空き店舗率は平均13%。「10%を超えると歩いていて空き店舗が目立つレベル」なだけに、天神橋筋商店街の空き店舗率がいかに低いかがわかる。午前11時の開店と同時に客の出入りが絶えない串カツ屋や寿司屋さん、さらには休日ともなると、大阪はもちろん、遠く京都や神戸からも客が商店街につめかける。そして、その元気な理由は、地元の大学商学部の先生によれば、日本一の商店街の長さそのものと関係しているという。天神橋筋商店街の起源は大阪天満宮の参道で、江戸時代前後には青物市場や乾物問屋街として栄え、それから長い商店街を形成してきた経緯がある。商店街がやや下火になり始めた30年前ごろに、日本一長いことをキャッチフレーズとして打ち出し始めたところ、客足が戻ってきたという。当時は天神橋筋商店街も大型店に押されて集客が振るわず、わかりやすい集客策として「日本一の長さ」をキャッチフレーズに採用。商店街の特徴をうまく発信し、反転のきっかけを作った。さらに、600店舗という店舗数も大きな魅力で、その中には、行列ができるコロッケ屋や、お好み焼き屋、豆腐の有名店など様々な種類の飲食店が軒を連ねる。これだけの数の店があれば、「ここにきたら必ず何かがある」というわくわく感も魅力になっている。ここ最近は、5月8日の水際対策緩和後に再び巻き起こるインバウンド(訪日外国人)ブームを背景に、訪日客がぐんと増えた。しかし、天神橋筋商店街はあくまでも、地元客が気軽に買い物できる店づくりを重視する店が多く、インバウンドの売り上げは当てにしない店がほとんど。コロナ前のインバウンドブーム時に、昔からのお客さんを捨て、インバウンドに特化して大失敗したミナミの黒門市場の例を教訓に、「通いたい」という気持ちを芽生えさせる商店街としての魅力作りに取り組んでいる。