第2204号 書店がどんどん減っていく
2022.02.15
本を読むのが好きである。作家もジャンルもテーマも何もない。いわゆる濫読といわれるもので、一種の活字中毒者なのだ。数年前、片づけの業者に入ってもらって断捨離をした。部屋に2000册を超える本があり、その内の半分くらいは読んだのかどうか定かではないものだった。ヒマがあれば、自然に書店に足が向く。それも、紀伊国屋や旭屋書店、ジュンク堂書店など大型店には行かない。街の片隅にあるこじんまりとした本屋で、じっくりと読みたいものを探す。至福の時が流れるのだ。ところが、その書店がここに来て加速度的に減っているという。わが町天神橋筋商店街の南北2.6kmの中にも、古本屋を除くと、2軒しか本屋が無くなってしまったのだ。日本書店商業組合連合会によると、今は書店数は全国で8000店くらい、ピーク時の3分の1に減ったという。書店の数が一番多かったのは1996年だが、その時は27,000店くらいあったといわれる。そんな中で、ネット書店の売り上げは伸びてはいる。しかし、リアル書店がなくなった分がそのままネットに移行しているわけでなく、本を読むことそのものが減っている。つまり書店が街から消えてゆくのに合わせて、読書そのものがなくなっていっているとい
うわけだ。この20年で日本の書店は半減した。2001年に21,000店あった新刊書店は1万店を割った。活字離れとアマゾンの影響と、常套句のようにいわれるが、それは正確ではない。たとえば毎日新聞社の読書世論調査でも読書率の顕著な低下はない。年によって増減があり、ここ数年は低下傾向にあるが、本を読む人が20年前の半分になったというようなことはない。たしかにアマゾンは売り上げを伸ばしているようだが、その影響は限定的なものである。もともと書店は大半が個人商店として立ち上がってきた。日本に活字や本のある生活が新しい文化として芽生えていった戦後すぐの時期、日本全国のいろんな街の駅前に小さな本屋ができて、日本の出版文化を担ってきた。一方で、時を経て電子書籍が誕生し、出版界も大きな変貌をとげるが、これも、紙の本を読んでいた人がそのまま電子で読むようになったかといえば、コミック以外はそうでもない。紙の本が減った分、電子書籍が伸びているのでなく、本を読むこと自体が減っている現実がある。書店の数はその国の文化度のバロメーターともいわれる。そして、その減少は国の未来にとっても由々しき問題なのである。今朝も、地下鉄の中では寝ている以外の9割の人がスマホを操作していた。日本国民の行く末が案じられる。
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